博物館船。
それは、その船や時代の様子を後世に伝えるため、
ほとんどの場合永久に停泊させて内部を公開もしくは研究できるように整えた船舶のことです。
博物館船には、航行時代にも火災への備えはあったわけですが、
半永久的に停泊するということは、その内部で火災が起こった場合、
陸地からの消火活動も可能になるわけで、より強力な防災体制が可能になります。
一方で、お客さんが来るわけですから、
いざという時のためには訓練されていない大人数が、
しかもその船の構造をあまり知らない大人数が、
内部で右往左往することになるということにもなります。
法律上は「浮体構造物」ということになり、
(1998年総務省消防庁予防課第47号)では、消防法が適用される係留船の消防設備については、船舶安全法と消防法で異なる要件を設定することがないようにしてね、と通達しています。同時に、それが難しい場合には所轄の消防機関の意見を聞いてね、と船舶の現状に即した対応をするよう求めています。
それで何が言いたいかというと、
係留時に新たな防災機能が付け加えられる、こともありまして、
その一つが消火栓設備、あるいは連結送水管システム!です!
…ということです。
これを記事にするのは初めてで、事務的に題名に①を付けましたが、
これまでにも博物館船はいくつか巡ってきていますので、時系列はばらばらですが、
書きやすい順にまとめていこうかと思った次第です。
ではでは。
2025年7月。
前回の記事「いざノーシンビル」のその後です。
せっかく名古屋に来たので、ずっと気になっていた「ふじ」へ。
あら~
歩道にペンギン?の足跡が…
ついていきましょう。
氷の海に映えるアラートオレンジ。
今日は灼熱の空の下ですが、鮮やかに目に飛び込んできます。
手前の陸地には送水口はありません。
こちらと船舶を繋ぐ消防配管的なものも無いようなので、
あるとしたら船舶の入口です。
右手に見える架け橋から入っていきます。
さてさて
おお…
入場口、ごみ箱の向こう側に在るのは、あれは!
スプリンクラー用送水口!
こんにちは!
ステンレス飾り板の文字部分、プレスからの赤インク!そしてkgf表記。
ふじの永久係留は1985年からですから、年代的にも納得です。
※プレスは1970~90年前後(PONTAさん調べ)その後アクリル(プラ?)プレートを経て現在はシールです。
※消防用設備等に係る技術上の基準における計量単位の
SI 化について(通知)消防予第 92 号は1997年
色アクリルは黄色。…黄色?
オレンジ褪色でしょうか。何とも愛おしい風合いです。
「船体に合わせて開館当時は鮮やかなオレンジであった」という妄想…
ここで立ち止まっていると迷惑になるので、涙目になりつつ進みます。
ここで目的の99%は達成しているのですが
いや、スプリンクラーヘッドとか
消火栓の方も見ないといけませんね
と思ったら送水口の足元にも既に一つ
可愛らしい消火栓がありました。
……ごめんなさい進みます。
消火栓はきっと中にもあると思いますので、大丈夫!
入ってすぐに、ふじについての紹介コーナー
一緒に行った家族が南極大好きなのでここはじっくり見てみましょう。
南極観測船は初代宗谷、ふじ、初代しらせ
そして現在は2代目しらせ。
これで、中に入っていないのは現役のしらせのみになりました。
どの船も、荒海を乗り越え、氷を砕き
研究を進めるために日本との往復を繰り返してきたのかと思うと
関わる全ての人々に頭が下がります。
と言いつつ上を見る
リボン付きヘッド!
これこそ博物館になってから付けられたものでしょう。
見学ルートに沿って歩いていきます(当たり前)。
ここから、船内の消防施設を紹介していきます。
「2・3号ボイラ周囲が火災のときは、この箱のハンドルを矢印の方向にまわすこと」
…これは開館前からのものでしょう。
回すのはこちらのハンドル。回したい。
窓枠が額縁のようで、ほとんどアートです。
「第2機械室が火災のときは、この中の取手を手前に引くこと」
取手…
たくさんありました。
うずうずしてしまいますが、カバーがあるので大丈夫。
横から見られるスプリンクラーヘッドたち。
いつもは遠いかれらが身近に感じられます。(物理的に)
ホースだ!
ホースかごだ!
こちらは元々の設備でしょう。
壁に取り付けてあるこのホース専用かごが最高です。
もちろん二重巻になっています。
船舶と言えば中島式接続口。
この無骨な感じが大好きです。
かご入り可愛いですね
その上には、水中電動ポンプ使用安全守則
こちらは、クラゲのようにかけてあるタイプ。
ちょっと儚げです。
ホースに人格を見出すように設置してあるとはさすが…
ホースに何か書いてありますが…
「海上自衛隊」!!!
ホースに!ホースに書かれてる!かっこいい!
因みに芦森工業様製品でした。
こちらにもクラゲさんが…
40Aで15m…
買おうと思ったわけでもないのですが、
何となく検索したら船舶用は20mよりも短いものが多い感触です。
船舶によって接手の規格も変わるようなので、興味深い。
こんどちゃんと調べてみようと思います。(今はしない)
ホースのそばには……はいありました!
船舶内消火栓!
(展示用)
ここにも!
ここに…は
ホースがありませんでした。
無い時を見るのも嬉しいです。(伝われ)
船舶内消火栓、詳細を見ていきましょう。
バルブは、ハンドルが付いているものと付いていないものがありました。
これは付いていない方。
鉄製のカバーがボルトに沿うように取り付けられていました。
中島式接続口。
日本では、陸上のホースおよび送水口・消火栓・放水口などの接手は町野式(がちゃんと嵌めるタイプ)、ねじ式(ぐるぐる回すタイプ)の2種類で、どちらも凹凸が決まっています。水が出る方向もです。
しかし、船上では接手は双方同じ形です。
この無骨な感じが大好きです。
接続口、下から
本体にアルファベットが見えます。
SKKと読めます。
「注意!開放は急速に 閉鎖はゆるやかに」
MS式ホース接手
三紀興業株式会社とあります。
先ほどのSKKはこの略称でした。
ということは実は2019年に分かっておりました。
蓋界のレジェンドにしてソーハク調査員の白浜さんがXに投稿していらっしゃったのです。
ここにはもう一つ気になる表記がありました。
MS式…?
船舶用バルブ等の専門メーカーである内山バルブ様のサイトに
MS式ホース接手の写真がありました。
これが中島式では…?と思ったのですがこのあたりご存じの方、
よければご教授いただけると嬉しいです。
写真めっちゃかっこいいです。
あと内山様のロゴ可愛いです。
当該接手のアップです。
こちらは開閉弁ということでしょうか?
もう少し艦内を歩きます。
水だけではないのですね。
ここまで消火設備について説明がある船舶は初めて(かな?)なので
嬉しいです。
消火のためには海水。
さきほどの消火栓からは海水が出るということですね。
貴重な淡水はそのためには使わないそうです。
泡沫発生器で使用される泡沫発生材も展示されていました。手厚い。嬉しい。
水だけではない消火方法、これもそう。
いや、正に。
大迫力でした。
本当に、船舶火災の恐ろしさよ…設備大事。
もちろん開館前の設備です。
デッキに出る前に、館内のものをもう少し。
なるほど、階段も拡幅とは。
かなり手を入れたのですね。
船舶内の床屋さんのぐるぐる。もちろん開館前設備。
これがあると安心というか納得感があるの、よく分かります。
デッキに出ました。
いや暑い暑い。
こういう日は、真っ赤な消防設備が青空に映えます。
この消火栓は開館後設置ですね。
こちらにも。
「ここにいるよ」アピール用に表示灯。九州の送水口を思い出します。可愛い。
おっとこといらは開館前の設備でしょう。
赤いので消火用のようですが、水(海水)が出てくる消火栓とは形状が違います。
解説ください…
バルブ3兄弟
(向かって左と中央だけなかよし)
消火栓、かな
何か見えますね
艦内と同じ、消火栓とホースのセットでした。
蓋無し。
撮っておきましょう。
見つけると撮影してしまいます。
折れないのかな
階段途中にも
蓋無し
撮っておきましょう。
ということで、
これは開館前、これは開館後、などと考えながら博物館船を見るのも楽しいね、という記事でした。
これまでに行った博物館船についても記事にしていこうと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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